Miu
Shinoda
Artist statement
— Dance together / in lasting peace —
私の意識は、無意識のうちに〈喜び〉を求め、常にどこかへと逃避し続けています。
そのような意識を見つめ、〈喜び〉という普遍的な感情と〈逃避〉という人間の根源的な行動原理を対峙させ、作品として表現することを試みてきました。
日本古来の仏教思想には、「一切皆苦」という真理が根底にあり、この考え方は私自身の思想に強く影響しています。
人は苦しみから逃れるために〈喜び〉を求め、様々な《娯楽》を生み出しました。
人々の生活と共に《娯楽》があり、価値を生み、やがて文化となり、私たちの〈喜び〉という感情をいっそう豊かにしていきます。
現代社会では、スマートフォンやIT技術の発達によって、私たちはいつでもどこでも「快楽」や「心地よさ」という〈喜び〉にアクセスできるようになりました。
繰り返される「心地よさ」は、時に強い光のように人間を解放し、同時にその光は私たちの存在の本質までも照らします。
私は〈花〉をモチーフに制作をしています。
私にとって〈花〉は、〈喜び〉という感情の象徴であり、「自然の運動」でもあります。花は自らの内に備わった本性に従い、土に芽吹き、内側から枝葉を伸ばし、咲き、やがて枯れ、再び芽吹くーこの営みは人間の在り方そのものです。
そしてそれは、キャンバス上で色を重ね、形を重ね、壊し、再び立ち上げるという行為を繰り返す私の制作プロセスとも重なります。
更に、ヨーロッパとアジアー大陸国家フランスと島国である日本を往復しながら、文化の境界や言語の壁、価値観や規範のズレに何度も直面し、世界と自己の境界を溶かしながら自らの存在を問い続けてきた私の経験とも深く呼応しています。
本展『Dance together / in lasting peace』では、フランス共和国大統領 Emmanuel Macron(エマニュエル・マクロン)が幾度となく発言に用いてきた「lasting peace」というワードに着目し、自身と他者(存在)を感じながら、花というモチーフを通じて〈自然の運動 ― 人間という個 ― 世界の一断面〉を表現することを試みています。
私も、あなたもまた、内なる必然に導かれながら個として生き、世界の一部として存在しています。
病める時も、健やかなる時も、心地よく時に過激な「喜び」という光を求めながら、私たちは共に踊り続けるのです。
2025年 冬 個展〈Dance together / in lasting peace〉に際し
Miu Shinoda